相続物件の売却…。故人名義の不動産を売ることは可能か

公開日:2025/01/15  

相続物件 売却相続した不動産を売却しようと考えた際に、名義が故人のままでは売却できないのでは?と不安に感じる方も少なくありません。しかし、適切な手続きを踏むことで、故人名義の不動産でも売却は可能です。本記事では、相続物件を売却するための具体的な手続きや必要な準備について解説し、スムーズに売却を進めるポイントをご紹介します。

2024年4月から相続登記が義務化されている

2024年4月1日から、日本において相続登記が義務化されました。これまで、日本では相続登記に関する義務がなかったため、土地の所有者が亡くなった後、相続人が登記手続きを行わずに放置されるケースが多発していました。とくに、相続人が複数いる場合には、所有権が共有状態となり、その後さらに相続が発生することで権利関係が複雑化する事態が生じていました。

国土交通省の調査によると、2022年度には不動産登記簿において所有者の所在が不明だった土地が全体の24%に上ることが判明しています。こうした土地は管理が困難であるだけではなく、利用も進まないため、地域の発展や経済活動に悪影響を及ぼしています。この問題を解消するため、相続登記の義務化が決定されたのです。

また、相続登記において以下の3つが相続人の義務となります。

・相続によって所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすること

・遺産分割により不動産を取得した場合は、遺産分割の成立した日から3年以内に想像登記をすること

・相続登記義務化以前に相続しが開始している場合は、施行から3年以内(2027年3月31日まで)に相続登記をすること

これらの義務に正当な理由なく違反すると、10万円以下の過料の適用対象となります。刑罰ではないため前科はつきませんが、やはり罰則は避けておきたいところです。

名義変更しないと売却できない?変更しないデメリットとは

土地や不動産を相続した際、名義変更(相続登記)をせずに放置してしまうケースが見られます。しかし、名義変更をしないことでさまざまなデメリットが生じるため注意が必要です。

土地を売却できない

不動産の売却には「真の所有者」の名義が必要です。相続登記を行わず、亡くなった方の名義のままでは売却することができません。たとえば、亡くなった親の土地を売りたい場合でも、相続登記を行い、自分の名義に変更しなければ売却手続きを進めることができないのです。

また、売却の手続きをしようとした段階で名義変更が終わっていないことに気付くと、そこから相続登記を行う手間が発生し、時間も費用もかかります。売却を希望するのであれば、早めに名義変更を行っておくことが重要です。

相続人間でのトラブルが起こる

名義変更を行わないまま時間が経過すると、所有権を巡ったトラブルが発生するリスクが高まります。たとえば、相続人のひとりが単独で登記を行ってしまった場合や、遺産分割協議がまとまらない場合などです。

さらに、相続人同士が親しい関係であるとは限りません。相続が複数世代にわたると、面識のない相続人も登場し、トラブルの解決が一層難しくなります。「いざ相続登記をしようとしたら、まったく知らない相続人が登記を済ませていた」という事態もあり得るため、早期の手続きが大切です。

手続きが困難・複雑化

相続登記を放置すると、次第に手続きが複雑化します。たとえば、元の所有者から次世代へ、さらにその次の世代へと相続が重なると、法定相続人が増え続け、土地の共有者が多数になるケースがあります。このような状態で名義変更を行うには、法定相続人全員の同意が必要です。

とくに2世代、3世代と相続が続いた場合、相続人の中には連絡が取れない人や所在不明者が出てくる可能性もあります。関係者全員の合意を得ることが困難となり、名義変更は非常に手間のかかる作業となってしまいます。

名義変更に必要な費用や書類は?

相続登記、つまり名義を変更するには、いくつかの書類と手続きが必要です。以下では、自分で手続きを行う場合と、司法書士に依頼する場合の2つのパターンの相続登記に必要な書類や費用について説明します。それぞれ必要な書類が異なる点にも注意が必要です。

自分で手続きを行う場合

自分で相続登記を行う場合、法務局への登録免許税(不動産の評価額による)が必要な費用となります。登記申請に必要な書類を準備し、法務局で申請するための手数料がかかりますが、司法書士に依頼する場合のような手数料は発生しません。下記の書類を揃えた後、法務局に登記申請を行います。

【自分で作成する書類】

・登記申請書:法務局のホームページからダウンロードできます。

・遺産分割協議書:遺言書に従って分割する場合や法定相続分通りに分ける場合には不要です。

・相続関係説明図:必須ではありませんが、他の手続きで使用する場合もあるため、作成しておくと便利です。

【役所で取得する書類】

・亡くなった人の戸籍謄本(生まれてから亡くなるまでのすべて)

・亡くなった人の住民票の除票

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人(不動産の所有者になる人)の住民票の写し

・固定資産税評価証明書(最新年度のもの)

・相続人全員の印鑑証明書

・不動産の登記事項証明書

司法書士に依頼する場合

司法書士に相続登記を依頼する場合、必要な書類を代わりに収集してもらうことができますが、相続人全員の印鑑証明書は自分で用意する必要があります。その他の書類についても、事前に集めておくと手続きがスムーズに進みます。

司法書士に依頼すれば、登記に関する手続きの代行を全て任せることができますが、その分、費用が発生します。一般的に、相続登記の費用は5~10万円ほどが相場となっており、依頼する司法書士事務所や手続きの範囲によって料金が変動します。

まとめ

相続した不動産を売却するには、相続登記(名義変更)を行わなければなりません。相続登記が済んでいない場合、罰則が科せられるケースもあるので、相続が決まったらすぐに手続きを進めましょう。また、相続登記を行うためには、いくつかの書類を揃え、法務局で手続きを行う必要があります。自分で手続きを進めることもできますが、司法書士に依頼すれば、一括でおまかせできて安心です。相続登記を円滑に進めるために、どちらの方法を選ぶかは、費用や時間、手間を総合的に考慮して決めるとよいでしょう。

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